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老後の味

日本人は、三大何とかと言うタイトルを付けるのが好きだ。

(三大珍味〔このわた、からすみ、雲丹〕、三大欲求〔食欲、睡眠欲、性欲〕とか)

 

僕の兄貴は大学を卒業して東京で就職をして早や45年。

18才で育った静岡から離れたので、静岡の生活期間より2.5倍は東京で生活している。

 

先日、一寸用事が有ったので、兄貴の処へ行って来た。

相も変らずの人で、帰る時、

「均、追分羊羹5本と、田丸屋のわさびマヨネーズと、コーラルベル(兄貴の同級生の店)の眼鏡を送ってくれ!」

と注文をつけられた。

兄貴(信さん)と僕(均ちゃん)

表題の写真は、「初恋の味 カルビス」である。

このキャッチコピーは上手く伝わり、僕等世代はほとんどこの言葉を知っている。

東京へ行って、何が楽しみか?と言うと、立ち喰いそば店に行く事だ。

神田薮とか?巴町の砂場とか?有名店に行きたいのではなく、三大立ち喰い処(富士そば、小諸そば、箱根そば)で、コロッケそばを食べると言う事だ。

コロッケそば

静岡では、東京に住んだ事の無い人や、学生時代懐が豊かだった人は、このコロッケそばの事をほとんど知らない。

僕達周辺の人で、学生生活を過ごした人は、この「コロッケそば」は『青春の味』だ!

汁の中にコロッケを溶かしてしまい、そばを食べた後、このドロドロした汁の中にライスを入れて、かき込む。

これこそ、大学生、下宿生活の味だ。

正しく「青春の味」。

渋谷の井の頭線ガード下の、昔よく行った店に行こうと思って、渋谷に行ったら、全く(当り前だが)変ってしまっていて、全く学生時代の面影はなかった。

立ち喰いトロロ店(二葉)パチンコ柳小路も姿はなかった。

 

Tさんの会社のメニュー

ゴルフの先輩に、仕出し、給食などを商売にしているTさんと言う方が居られる。

Tさんは、料理人で、和食店を営んでいたが、技術を活かして、企業と言う形に店を替え、規模を大きくなさった方である。

色々な施設内の食堂や、給食を行っている方だが、こんな事を聞いた事がある。

老人施設の食事の依頼も沢山来るが、老人給食は難しい。

老人達は嚥下に対して非常に気を使う。

よって何か事故などが起ると命の問題になる。

全ての物を軟らかく、細かく、調理する。

最後はミキサーに全て掛けて、トロトロにしてしまう様な話を聞いた事がある。

全ての食事がミキサーに掛けられ、「どろどろ」の食事が日常となり、生活の中に組み込まれ、『初恋の味』『青春の味』とともに、人生に於いて、三大人生の味となり、『老後の味』が感慨深いものになるのは、嫌だなぁ。

 

 

       記  ダボ・イトウ

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